「出版科学研究所が初めて電子出版の市場規模を調査」「紙の出版物販売額は5.3%減」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #205(2016年1月25日~31日)

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毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「出版科学研究所が初めて電子出版の市場規模を調査」「紙の出版物販売額は5.3%減」などが話題になっていました。

和気町の地方創生 柱は書店 : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) ※2016年1月23日

書店に的を絞った補助制度を国の地方創生基金を活用して創設。起業支援補助金として通常業種に加え、古本を除いた書籍・雑誌小売業を特定業種に指定し、出店費用の4分の3(上限150万円)を補助する。

企業誘致のために補助金や助成金を出したり経済特区で税金を優遇したりというのはよくある話ですが、まさか新刊書店に的を絞った補助制度とは。うーん、まあ、使える制度はうまく使えばいいのでは。ところで200万円で出店できるの?

【討論】図書館で売れ筋の新刊本を貸し出すタイミングは?(1/4ページ) – 産経ニュース ※2016年1月24日

新潮社常務の石井昂氏と、日本図書館協会理事長の森茜氏に、それぞれインタビューした記事。これ、二人で討論してもらったらいいのに。

紙の出版物、15年の販売額5.3%減 減少率は過去最大 :日本経済新聞 ※2016年1月25日

タイトルに「紙の」と書いてあるので「お?」と思いました。今回、出版科学研究所が初めて電子出版の市場規模を出しているんですね。電子出版市場は1502億円(前年比31.3%増なのでプラス358億円)。紙の出版市場1兆5220億円に比べ約9%とまだ小さい市場ですが、決して無視できない存在になってきているのは確かです。

出版月報 2016年1月号』を通販で注文したんですが、入金確認後に発送とかいってまだ手元に届いていないので、詳細はまた別稿にて。既にDOTPLACEへ書いたのですが、もうちょいちゃんと深掘りしたい。

米Amazon、地元ドラッグストアチェーンで電子書籍ギフトカードの販売を実験中 – hon.jp DayWatch ※2016年1月25日

あれ? 同じような仕組みが日本で登場したとき 「店頭で買う電子書籍という矛盾!」などと、さんざんバカにされてなかったっけ? 「ジャパゾン」で検索すると、そういう記事がゴロゴロしてますね。懐かしい。

ちなみにボクは当時、実店舗での電子書籍販売は擁護しつつ、違う角度からの批判記事を書きました。しかしせっかく取り上げた三省堂「ヨミCam」が、いつの間にか消えてるんですよね……。

TPPと著作権 保護強化で創作意欲守りたい : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) ※2016年1月27日

2010年と少し前の話なので知らなかったのですが、日本新聞協会、日本雑誌協会、日本文芸家協会、日本書籍出版協会、学術著作権協会、日本写真著作権協会は連名で「日本版フェアユースに反対」という意見書を文化庁に提出しているんですね。なるほどなあ。恐らく当時からまったく意見は変わっていないのでしょう。

「保護強化で創作意欲守りたい」とありますけど、権利を強化するばかりでは萎縮効果が強くなってしまうので、ボクはバランスの問題だと思います。いまは権利強化に傾きすぎている感。

英メディア:進む「デジタル優先」 ジャーナリストが講演 – 毎日新聞 ※2016年1月27日

英フィナンシャル・タイムズのデジタルファーストが進化して、いまでは「オーディエンス・ファースト」になっているという話。ジャーナリスト・小林恭子さんの2月4日のトークイベント、行ってきます。

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[編集長コラム]デジタルファーストで取次委託流通も | OnDeck ※2016年1月28日

こちらもデジタルファースト。インプレスR&DのNextPublishingが、従来からの出版方法(伝統的出版)でも販売できるようになりました。出版の流れを大きく変える可能性のある、良い取り組みだと思います。

先行した電子書籍(とPOD書籍)の販売実績で成績のいいタイトルに限り取次版を製品化するので、売れない本を大量に市場に出してしまうリスクが軽減できます。電子出版側から見れば、電子出版で可能性が確認されたタイトルは、大量陳列・販売の機会が得られるという、段階的なマーケティングが可能になるのです。

いま「書籍の返本率40%」で出版危機とか言ってますけど、一番出版市場が大きかった1997年ごろも書籍の返本率は40%を超えていたんですよね(ただし、雑誌の返本率はどんどん上がっており、雑誌が危機的な状況だと言うのは理解できます)。結局、NextPublishingみたいな抜本的な改革を行わなければダメ、ということなのだと思うのですが。

Google Playにコミック専門の「マンガストア」オープン – ケータイ Watch ※2016年1月28日

Google Playブックスにやっと集英社がマンガを配信。小学館はいまだ未配信。Google Book Scan訴訟騒動で、悪いイメージがあるんでしょうねぇ。

AAP発表、米国内の1〜9月期の電子書籍売上高は前年同期比-11%、書籍業界全体も-2% – hon.jp DayWatch ※2016年1月28日

AAP(Association of American Publishers)なので、出版社団体の発表数字。個人作家の数字は含まれていません。

社説:出版市場の縮小 本の多様性を守りたい – 毎日新聞 ※2016年1月29日

こちらは一足先に軽減税率対象となった新聞業界から、出版業界へのエール。まあ、新聞社は出版社も持っていますから、次は出版物だ! というところなのでしょう。ところで、多様性だけなら軽減税率無関係なウェブや電子書籍の方がよっぽど高いと思うのですが。


本日発売の『ユリイカ 2016年2月臨時増刊号 総特集◎出版の未来』と『週刊エコノミスト 2016年02月09日号』に、NPO法人日本独立作家同盟理事長として受けたインタビューの記事が掲載されています。ちなみに、同じ日に発売されたのは完全に偶然です。

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