「日販の雑誌売上が書籍を下回る」「八重洲ブックセンターがトーハンの傘下に」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #223(2016年5月30日~6月5日)

Nexus 7のGooglePlayブックス

毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「日販の雑誌売上が書籍を下回る」「八重洲ブックセンターがトーハンの傘下に」などが話題になっていました。

ダイヤモンド社「電子書籍アプリ」および「中谷彰宏文庫」サービス終了のお知らせ | ダイヤモンド社 ※2016年4月1日

お知らせそのものは4月1日付けで出ていたようですが、5月31日にサービス終了するまで、少なくとも私の視界の範囲では話題になっていませんでした。2010年に『もしドラ』のために開発したオリジナルビューワ「DReader」を使用した電子書店サービスが終焉。縦書きを実現していたようですが、時期的にはEPUB 3登場前なので、レガシーコストになってしまっていたのかなと想像。

【新文化】 – 小学館決算、当期損失30億円強に ※2016年5月27日

1週前の記事ですが気づくのが遅れたのでピックアップ。「妖怪ウォッチ」関連の反動が大きかったとのこと。そこで、コロコロコミックの印刷証明付き発行部数を調べて推移グラフにしてみました。

ニンテンドー3DS用ゲームが出たのが2013年7月11日。56万部まで減っていたが一気に部数を増やし、1年でほぼ倍に。そこからまた1年で、わりと急角度に部数を減らしています。ブームって怖いですね……。

auとGunosyが無料アプリ「ニュースパス」、auユーザー以外も – ケータイ Watch ※2016年5月30日

1月に業務提携して夏リリースの予定通り進んでいます。お? と思ったのは、auユーザー以外でも利用できる点。auの「××パス」で、auユーザー以外でも利用できるサービスは初めて? 「ブックパス」など他のサービスにも広がることを期待。

【新文化】 – 主婦の友社「ヒーロー文庫」、累計450万部で売上げ連続20%増 ※2016年5月31日

重版率100%! すごい! ウェブ小説の書籍化専門レーベルとしてはやや後発組ですが、着実に売上を伸ばしているのですね。すばらしい。

「ネット薄利多売」パワーが炸裂!? 電子コミック「1か月で売上3億円超」の仕組みとは : J-CASTニュース ※2016年5月31日

ニュースメディアで、プライスマッチングを逆手にとったやり方だという推測に触れている記事をようやく発見。

[実証実験]アマゾンのタイムセールの対象になるPOD書籍 | OnDeck ※2016年6月1日

Amazon PODも、Amazonが勝手に値引きしたぶんの負担はAmazonが負う形になっているのですね。つくづく、すごい会社だなあと思います。

出版状況クロニクル97(2016年5月1日~5月31日) – 出版・読書メモランダム ※2016年6月1日

毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。仲俣暁生さんの「『出版不況論』をめぐる議論の混乱について」に対する反論が、どうも噛み合っていないように感じます。小田さんの言う「出版業(界)」が、どうやら取次ルートだけを指していることは理解できました。鳴らしている警鐘も、その危機だけを対象としているのでしょう。すなわち、Amazonと出版社が直接取引することや、「電子書籍」はその危機を加速する悪者というスタンスになります。論旨に納得はできないですが、理解はできます。ただ、

(前略)出版業危機と表記しないのは、言葉として成熟していないこと、また原則的には出版の中に出版業も含まれるべきだが、日本の近代出版に限れば、現実的には出版が出版業の中に包括されてしまうという事実もあるからだ。

ここが何を言いたいのか、私には読解できない……「出版が出版業の中に包括」って、どういう意味なんだろう?

「タイム」が10年連続減収から脱出できたワケ | DIGIDAY[日本版] | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 ※2016年6月1日

ネイティブアドと、動画広告が売上伸張要因だったそうです。

東京都議会の取材に行ったら「ネットメディアは報道ではない」と断られた話 – BuzzFeed ※2016年6月2日

ネットメディアでも、例えばJ-CASTニュースは普通に取材してるんですよね。ネットメディアというだけで排除されたわけではないように思います。BuzzFeed, Incの「会社情報」を見ると、住所・電話番号・代表者名など、自らの素性を示す情報が一切ない。これは塩対応されても仕方がないような気がしますよ?

そういえば、自由報道協会ってあったなあ……まだあるのか。

雑誌売り上げ、書籍を下回る 日販の前期、32年ぶり 女性誌落ち込み 「火花」などヒット :日本経済新聞 ※2016年6月2日

なかでもコンビニの雑誌の返品率が51.2%と高く、記者会見した日販の加藤哲朗専務は「この1年でコンビニで雑誌が売れなくなった」と話した。

雑誌はこの20年ほどずっと下落傾向だったはずなのに、わざわざ「この1年で」と言うからには、なにか特別な事象がある(と言いたい)のではないかと感じました。ほんとは「dマガジン」のせいだと言いたいんじゃないかな? Fashionsnap.comによると、とくに女性ファッション誌が対前年11.8%減と不振のようです。

八重洲ブックセンターがトーハンの傘下に 鹿島建設グループから株式の49%を譲受 – ねとらぼ ※2016年6月2日

視界の業界人たちが驚いていました。代表取締役はトーハンが派遣するそうです。「ウラゲツ」の備忘録によると、ここは日販とトーハンのダブル帳合だったので、今後はトーハン1本になるだろう、とのこと。帳合戦争!

Amazonは金で買ったレビューを載せた売り手企業3社を訴訟 | TechCrunch Japan ※2016年6月2日

Googleアラートにキーワード「電子書籍」を登録していると、クラウドソーシングで「感想を書いてください」とか「特定の本を購入してください」といった案件がゴロゴロしていることに気づきます。日本でも近いうちに、案件依頼している業者や仲介している業者に対する訴訟がくるんじゃないかな? 滅びろ!

Kindle日本上陸初期から活動した個人作家・如月恭介氏のアカウントがAmazonに削除されたらしい件 – きんどう ※2016年6月3日

Kindleダイレクト・パブリッシングのアカウントが、いきなり削除されてしまったという話。如月恭介氏のブログによると、「自動生成ツールによって作成されたアカウントによって、私の本の借り入れがあった」という嫌疑をかけられてしまったようです。Amazonからのメール文章が公開されているので “systematically generated accounts” などのキーワードで検索してみたところ、Amazon.comのKDP Communityで同じような相談が今年に入ってから何件かあるのを見つけました()。

“Kindle Direct Publishing Terms and Conditions” や Help で “borrow(借りる)” と表現されているのは “Kindle Subscription Programs(=Kindle Unlimited:KU)” と “Kindle Owners’ Lending Library Programs(KOL)” の2つのみ。数カ月前、KUの読み放題で「読まれたページ数」のカウント方法を悪用した詐欺行為が問題になっているという話題がありました。これと “systematically generated accounts” というのを結びつけて考えると、Kindle Unlimited(月額9.99ドル)は30日間無料で試すことができるので、それ用のアカウントを大量生成している輩がいる、ということになるのでしょう。KOLは1カ月に1冊しか借りられないので、悪用するのは難しそう。

問題は、その疑いがなぜ如月氏にかけられてしまったのか? という点。最初に思い浮かんだのは、シェアオフィスやネット無料マンションで、同じグローバルIPなので巻き添えBANを食らったという事例。あとは、DNSサーバーやルーターが踏み台にされたとか、なりすましとか、遠隔操作とか。10年間にわたって「デジタル濡れ衣」を着せられたなんて事件もあります。いろんな可能性が考えられるので、もし自分が同じような事件に巻き込まれたら……と思うと、非常に怖いですね。

ただ、KDPではないですが、濡れ衣BANでカスタマーサポートに問い合わせしたらアカウント復帰できたという事例もあります。如月氏も問い合わせをしている段階なので、今後どうなるか注視しておきたいところです。


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