「カドカワ電子書籍事業が大きく成長」「電子コミック11円セールで3億円」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #222(2016年5月23日~29日)

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毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「カドカワ電子書籍事業が大きく成長」「電子コミック11円セールで3億円」などが話題になっていました。

次世代ウェブ技術の姿 ティム・バーナーズ=リー氏 続報 | Romancer ※2016年5月23日

IDPF DigiConにWorld Wide Web生みの親ティム・バーナーズ=リー氏が登場。W3CとIDPFの統合検討が発表された際のスピーチです。

一時は98%のシェアを持つMicrosoft社の言いなりになるしかないと考えられていたウェブですが、これを乗り越え、自由で民主的なメディアへと発展しました。

これ、IDPF事務局長ビル・マッコイ氏のスピーチでも、まったく同じことに触れています。IDPFが果たしてきた役割にあてはめると、それは「Amazon社の言いなりになるしかないと考えられていた」状況を、オープン規格のEPUBによって乗り越えてきた、ということになるのでしょう。

W3CとIDPFの統合によって、今後どんな変化が起こるのでしょう? 例えばブラウザに、ReadiumやBiB/iのようなEPUBビューワの組み込みが標準仕様として勧告される? そうなると、ブラウザビューワを商売にしているところはどうなる? 注視しておきたいところです。

W3CとIDPFは統合したほうが良いか?(W3C and IDPF: Better Together?) ※2016年5月25日(元記事公開日はMay, 18th, 2016)

EPUB 3の仕様策定に尽力したHachetteのDave Cramer氏によるブログ記事の日本語訳版。標準化にもっと多様な方々の参加を求む、という呼びかけがなされています。元記事には寸断されたヘビのイラストに“JOIN, ir DIE.”と書かれた画像がアイキャッチに使われていますが、これは何を暗示してるのだろう?

私たちは人生の多くの時間を不十分な実装やバグだらけのリーディングシステム(Kindle……ゴホンゴホン)に割いてきた。

あ、はい。iBooksの仕様にも苦しめられてます。他にも、サイドロードの見た目と、正規入稿した場合の見た目が違うとか。ブラウザビューワとアプリで見た目が違うとか。そもそもサイドロードできないビューワとか。W3Cとの統合で、寸断されたヘビは元に戻るのかな?

カドカワ—16.3期営業利益91.24億円、電子書籍事業が大きく成長 | 個別株 – 株探ニュース ※2016年5月23日

「電子書籍事業が大きく成長し利益で通期予想を大きく上回る要因となった」とのこと。dマガジンが牽引してるのかな? と思ったのですが、決算短信には「ニコニコカドカワ祭り」が売上伸張に大きく貢献とありました。直営のBOOK☆WALKER、他のストアでの販売含め、全体に伸びてるみたいです。

「ハイスコアガール」7月より連載再開!最新6巻&リニューアル版の単行本も – コミックナタリー ※2016年5月23日

キタ━(゚∀゚)━! 1~5巻はリニューアル版が出るそうで、↓この表紙の旧版はもう手に入りません。「もう買えない」コレクション!

BOOK☆WALKERのハイスコアガール

図書館が新刊本の寄贈を求めるの「やめて!」 小説家が「本売れなくて死んでしまう」と訴える : J-CASTニュース ※2016年5月24日

高岡市立図書館の「寄贈のお願い」などに対するクレーム。これ、ただ単に広く寄贈を求めているわけではなく、「予約の多い本です」と具体的にタイトル・著者名を挙げて「譲ってください」と呼びかけているんですね。しかもInternet Archiveには2013年からログが残っていて、タイトルもログごとに違う。つまりずっと「新刊」の寄贈を求め続けているわけです。ただ、J-CASTの取材によると、高岡市立図書館にハードカバーの新刊を寄贈する人はいないそうで、意味がない上に作家の悪感情を煽る結果に陥っているという。なんだかなあ。

ドイツ最高裁、コピー機の複写権徴収団体が「出版社に徴収金を分配するのは違法」と判断、122億円の返金を命令 – hon.jp DayWatch ※2016年5月24日

「徴収金の支払先として著作権者(作家)ではない出版社にも分配されている件が問題」とされ、返金が命令されたとのこと。最高裁ってことはこれで確定したわけですよね。すごい判例ができたなーという感じ。日本では公益社団法人日本複製権センター(JRRC)や一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)が複製権利用料の徴収と分配をしているわけですが、大丈夫なのかな?

電子コミック「11円」セールで売り上げ3億円超 トップ作家に印税1億3000万円 「常識打ち破る数字」 – ITmedia ニュース ※2016年5月27日

あえて手の内をバラしてみました」と言いながら肝心なところが伏せられているのですが、公式セールは楽天Koboだけで行われていたのですよね。Kindleストアのプライスマッチングによる逆ザヤ狙いが成功した事例、ということになると思います。解説記事を書きましたので、詳細はそちらをご参照ください。なお、3億円というのは作家側の売上(=ロイヤリティ)なので、3億円÷11円(≓約2727万部)という計算は間違い。

Oracle敗訴―陪審員はGoogleのAndroid中のJava APIを「公正使用」と評決 | TechCrunch Japan ※2016年5月27日

この裁判の行方次第では、Androidというプラットフォームを根幹から揺るがしかねないところだったので、「電子出版」関連としてピックアップ。それにしてもアメリカの「フェアユース(公正“利用”と訳して欲しい)」は強い。控訴審はどうなるか。

アマゾン直取引&「取次外し」で出版社が大幅売上増…取次、無用の長物化で存亡の危機 | ビジネスジャーナル ※2016年5月27日

謎の出版業界通・佐伯雄大氏の記事。サイゾー系は怪しい情報があまりに多いのであまり取り上げたくないのですが、佐伯雄大氏の記事だけは気になってしまう。しかしこれ、Amazonが「巧妙」というよりも、ビジネス的には当然のことを言っているだけ、という感じがします。Amazonの立ち位置的に、取次の弱点を突くのは当たり前の戦術ですよね。取次が自身の弱点を解消する努力をすれば、健全な競争になるわけで。


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