毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「アメリカKindleセール情報サイトが次々閉鎖」「Kindle Unlimited日本上陸か?」などが話題になっていました。
出版営業が『まっ直ぐに本を売る』を読む « マガジン航[kɔː] ※2016年6月13日
書店と「直取引」する独自ノウハウをもつ出版社・トランスビューの秘訣を石橋毅史さんが取材して書いた『まっ直ぐに本を売る』(苦楽堂)を、TAC出版の湯浅創さんが書評。本筋ではないのですが、ここが気になりました。
書店「数」が減少していることは動かすことのできない事実である。だが、Amazonを加えれば、「書籍の購入金額」は必ずしも減少一方とは言い切れない。
ガベージニュース『出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる』によると、日販『出版物販売額の実態』に載っている「インターネットルート」は微増程度で、「書店ルート」の落ち込みを補うほどではありません。ところがこの数字、Amazonと出版社が直接取引している分が、がっぽり抜けてる可能性があります。Amazon「e託」の説明会では、アカウント数や登録タイトル数は伸びているとされているようなので、実態としては湯浅さんが書かれている通りなのかな、と。
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石橋 毅史
苦楽堂
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読まねば。
小説投稿サイト「カクヨム」編集長インタビュー 「編集者は危機感を持ってほしい」 ※2016年6月13日
カクヨム編集長 萩原猛さんへのインタビュー。もともと富士見書房でウェブ小説の書籍化をやっていたそうです。システム開発についてドワンゴ川上会長に相談したら、はてなを推薦されたという下りが「お?」という感じ。社内開発できるリソースがなかったのかな?「餅は餅屋」ということなのかもしれませんが。
本日は「niconicoとカクヨムの連携を将来的には更に強化できるようにしたいですね」という打ち合わせをさせていただきました。
こういった今後に向けてのお話もよくさせていただいております。しばらくかかるかもしれませんが、色々検討しています。 #カクヨム
— Web小説投稿サイト「カクヨム」運営 (@kaku_yomu) 2016年6月15日
こんな話も。
(図書館考)ドイツ編:上 人気本、貸し出し有料 2週間2ユーロ、収入で新たな本:朝日新聞デジタル ※2016年6月14日
(図書館考)ドイツ編:下 税金で作家に補償金 貸し出し回数に応じ生計支援:朝日新聞デジタル ※2016年6月14日
図書館での有料貸出や、公共貸与権について。日本の公共図書館は法律によって「いかなる対価をも徴収してはならない」と規定されていますが、そろそろ見直すべき時なのかも?
Amazon、FireタブレットでmicroSDにKindle本を保存可能に – PC Watch ※2016年6月15日
やっと。2012年のFire HD登場時から外部記憶装置に対応していないことはネックとされていたので、3年半越しということに。microSDカードの割引キャンペーンを一緒にやっているというのが、なかなかにくい。
【Made for Amazon認定取得】 SanDisk 64GB microSDXCカード (スピードクラス Class10, UHS-I, 最大転送速度: 48MB/s)
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学研HD、電子書籍が実用書好調で営業黒字化 16年9月期:日本経済新聞 ※2016年6月16日
「電子書籍黒字化」について、他の出版社の方々が何人も「ほんとに?」と首を傾げていたのが印象的でした。なにげなく株式会社ブックビヨンドのウェブサイトを見たら、「楽天Kobo限定」のセールがやたら目に付く……これ、もしかして佐藤秀峰さんの「電書バト」と同じ手法?
米国のKindleセール情報サイトが次々と閉鎖、Amazon社の書籍アフィリエイトリンク禁止方針により – hon.jp DayWatch ※2016年6月16日
「きんどう」さん大丈夫? という声を複数見かけました。zonさん自身が解説していますが、「メール上での書籍アフィリエイトリンクを禁止」→「Goodreadsでメルマガを開始」という流れがあった上でのコレ、という話。
他方、Amazonはアフィリエイターによって自社サイトの発信力が相対的に落ちるのを嫌っている、というような解説も。まあ、アフィリエイターはパートナーであるのと同時に、ライバルでもありますからね。2年前に段階制料率を廃止し、いまはまだデジタル商品を優遇していますが、いつ下げるかわかったもんじゃない。Amazonはアフィリエイターの生殺与奪権を持っているのです。怖い怖い。
米BookBaby、電子書籍の個人作家向けに現役編集者を紹介するサービス「Book Editing Services」を発表 – hon.jp DayWatch ※2016年6月16日
いままで出版社の中(編プロ含め)にあった「機能」の一部が、バラ売りされていく感じ。2012年のシンポジウム「電子書籍時代に出版社は必要か」を思い出しました。
Kindleストアに「女性向けコミックストア」 まとめ買いで50%オフ! ※2016年6月17日
「女性」「コミック」のユーザー獲得に動いてますね。女性に人気がある電子書店は、めちゃコミック、Yahoo!ブックストア、コミックシーモア、Rentaあたりでしょうか。ただ、MMD研究所のリサーチによると、女性の利用率1位は、男性と同じくKindleストアなんですよね。購入頻度・額の高いコアユーザーが欠けているのかしらん?
Kindle本読み放題『Kindle unlimited』がいよいよくる……かも? – きんどう ※2016年6月18日
電子書籍読み放題のKindle Unlimitedがまもなく日本上陸?|携帯総合研究所 ※2016年6月18日
AmazonのAPIで公開されたページ情報なので、確度は高そうです。ラインアップがどうなるか気になるところ。ブックパスで読み放題になっている4万点は、そのまま「Kindle Unlimited(KU)」にスライドしてもおかしくないと思います。あとはKDPセレクト独占配信作品。
KUがはじまると、著者側としてはKDPセレクトに登録する意義が高まるのは間違いありません。「Kindle オーナーライブラリー(KOL)」は月1冊限定なので、利用者としてはなるべく高額な本を選びたくなるインセンティブが働きます。簡単に言うと、250円の本を月1回しか使えないKOLで借りるのは「もったいない」と思ってしまう可能性があるわけです。しかし、読み放題ならそういうことを気にする必要がなくなります。つまり、安い本もばんばん読まれるようになる、という激変が起こると思います。
こうなると、よほどのことがない限り、KDPセレクトに登録してKindle独占配信、という手段を選ばない理由がありません。少なくとも90日間はKDPセレクトで様子を見て、売上が落ち着いてきたら他ストアへの配信も検討する、みたいな流れができることでしょう。Kindleストア以外で直接取引できる「BWインディーズ」「楽天Koboライティングライフ」などは、本気でKU対策をしないと(つまり強力なインディーズ優遇策を採らないと)みんなKDPセレクト独占配信で抱え込まれちゃうと思いますよ。マジで。
先々週お伝えした、Kindleダイレクト・パブリッシングのアカウントがいきなり削除されてしまった事件。私が把握している範囲で、日本では3人犠牲になっていたのですが、3人とも無事にアカウントが復旧されました。よかった!
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