毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「KADOKAWAに不正アクセス」「Kindleで海賊版同人誌」「サイファー・テックのDRMに不具合」などが話題になっていました。
紀伊國屋書店、玉川大学と電子書籍版教科書の共同プロジェクトを開始 – ITmedia eBook USER ※2014年1月14日
「玉川大学が Kinoppy を採用した」ということでしょうか。紀伊國屋書店のプレスリリースも読んでみましたが
紀伊國屋書店は、本プロジェクトを進めて行くことで、未だ十分には進んでいない専門書の電子書籍化を出版社に対して強力に働きかけてまいります。
こういう働きかけから、電子化が進んでいくといいですね。
利益率たった1%で突き進むアマゾンの奇才経営者:日経ビジネスオンライン ※2014年1月14日
Amazonのジェフ・ベゾスが、どういう考え方に基いて事業を行っているかについて。「顧客第一主義」と言うは易しいが……ですね。そういえば「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」まだ読めてないや。
ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者
posted with amazlet at 14.01.19
日経BP社 (2014-01-09)
売り上げランキング: 114
ある国内大手出版社、悪質なiframe仕込まれる、閲覧者が「Gongda」の餌食に -INTERNET Watch ※2014年1月15日
当初、出版社の名前が明かされていませんでしたが、「書籍や雑誌、漫画、映画から、ゲームまで取り扱っている大手」ってバレバレですよね。KADOKAWAでした(本文中にも追記がある)。オフィシャルサイト「http://www.kadokawa.co.jp/」がやられていたということで、ブランドカンパニーや子会社の方は特に問題なかったようです。ヘタに隠そうとするもんだから、「BOOK☆WALKER大丈夫?」と疑心暗鬼になってる人を何人も見かけましたヨ。
同人関係者は要注意!あなたの本、Kindleで勝手に売られるかも! ※『艦これ』の薄い本でトラブル発生中デース ※Amazonにて削除完了しました | きんどるどうでしょう ※2014年1月15日
Kindleの審査の甘さが露呈した事件。ボクが初めてKDPに登録した時は、3時間くらいで販売開始されましたから、実際のところ中身なんか見ちゃいないだろうなーと。EPUB Check通してる程度かな? 「とりあえず売り始めて、何か問題が出たら削除する」というやり方なのだと思います。ただ、発覚から1日経たずに削除されたというのは、比較的迅速。
自分の同人誌が勝手にamazonのkindleで売られてるんだけどこれどうしたら良いの・・・
— 鶴崎貴大 (@w_takahiro) 2014, 1月 15
色々リプありがとうございましたー!とりあえず手続きをしつつ対策を考えることにします。自分がkindleで販売してると勘違いされるのが一番怖い・・・
— 鶴崎貴大 (@w_takahiro) 2014, 1月 15
おお。kindleの海賊版消えてた!素早い対応ありがとうamazon先生!
— 鶴崎貴大 (@w_takahiro) 2014, 1月 16
鶴崎貴大さんからの通報直後に削除したということでしょう。Amazonはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基いて動いているので、権利者通報には迅速に対処します(削除すれば免責されるので)。というか、権利者以外からの通報では、プラットフォームは動けないです。
GALAPAGOS STORE、イオン幕張新都心店で雑誌閲覧サービス提供 – ITmedia eBook USER ※2014年1月16日
シャープは法人向けソリューションに力を入れてますね。もう1歩進めて、美容院とか病院とか喫茶店辺りに置いて、閲覧だけでなく購入もできるようにできないかな? スマートフォンをかざすだけで買えるような簡便さがあるといいのだけど。
シリコンバレー101 (548) 同じKindleのライバルでも…売上60%減のNookと、好調だった街の本屋 | マイナビニュース ※2014年1月17日
アメリカの最新の状況について。Hugh Howeyによる、大手出版社が生き残るための13の提案というのが面白い。
最初に価格の高いハードカバーから売り始めて、そこに宣伝費を投じるのではなく、電子書籍、ハードカバー、ペーパーバック、全てを用意する。そうすれば、読み捨てしたい読者はペーパーバックか電子書籍を選ぶし、図書館やコレクターはハードカバーを選択する。より多くの人に読まれてこそ本であり、どのようなスタイルで読むかを最初から読者に選ばせろというのだ。
日本の出版社に対する提案かと思いました。アメリカでもまだ、こういう提案が必要なのですね。
「BookLive!」の電子書籍リーダーでWindowsがフリーズ DRM技術に問題 – ITmedia ニュース ※2014年1月17日
スラッシュドット・ジャパンの記事とコメントに詳細が載っていますが、サイファー・テック製のDRMがWindowsの動作に悪影響を及ぼすというのは、技術系に詳しい人には以前から知られていたことだったようです。山本一郎氏がYahoo!個人でこの話題を取り上げたことで、一気に話題になりました。記事タイトルでBookLive!の名前だけが挙げられているのがちょっと気の毒。
しかし、こういうのをきっかけに、正規ユーザーを盗人扱いして不便を強いるようなDRMが廃れていくといいのですけど……。
フィックス型EPUB3作成アプリを作ってみた | 電書魂 ※2014年1月17日
ありそうでなかった、個人向けの固定レイアウト型EPUB 3作成GUIアプリが登場です。Mac用。文中にもありますが、ターミナルから利用するコマンドラインツールは存在していたんですけど、詳しくない人にはハードルが高かったんですよね。これで、マンガ・写真集・絵本などの作家が、自己出版しやすくなるのではないでしょうか。田嶋さん、ありがとう。
ノルウェー、数万書籍をネットで無料閲覧可能に 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News ※2014年1月18日
著作権保護期間中の作品を、著作権保持者の承諾を得た上で無料公開するという試み。ちなみに日本では、2010年に国立国会図書館館長(当時)の長尾真氏が打ち出した構想(通称、長尾構想)が同じような内容だったのですが、出版社からの反対により潰されています……。
社説:電子出版権 明快な契約ルールを – 毎日新聞 ※2014年1月19日
文化庁が「電子出版権」を新設する方針を決めた
電子書籍にまで出版権の対象を広げることで
「電子出版権」の新設というのは経団連の提言で、現行出版権の拡張は中川勉強会の提言、出版社は著作隣接権の付与を主張という構図だったはずですが、この毎日新聞の社説はどうもその辺りをごっちゃにしているような。読んだ人、混乱しないだろうか?
ちなみに、契約書が後から送りつけられてくるような出版業界の慣行はダメという指摘は正しいと思うのですが、電子出版に対応した契約書のヒナ型は日本書籍出版協会から随分前に出ているのですけど……。