先週は「リーチサイト・ネタバレサイト、摘発相次ぐ」「青少年読書感想文全国コンクールが電子書籍NGな理由」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年9月4日~10日分です。
INIAD坂村健×KADOKAWA角川歴彦が語るコンテンツとIoTの「再定義」 ASCII.jp(2017年9月4日)
角川歴彦氏の、『クラウド時代と<クール革命>』『グーグル、アップルに負けない著作権法』『躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア』は、三部作だったのですね。“かつて「売上は新作:旧作=8:2の比率になっている(ロングテール)」と言われたが、今後さらに先鋭化していくのではないかとも指摘する。” という箇所に疑問。昔は「パレートの法則(8対2)」で2割の売れ筋商品が8割の売上を占めていたのが、膨大な品揃えでロングテール部分の合計売上が売れ筋に匹敵するようになった、という理解だったのですが。うーん、読めばわかるのだろうか。
FBに頼る海外のニュースメディア、FBに頼らない日本のニュースメディア メディア・パブ(2017年9月7日)
海外主要ニュースメディアのFacebookページは、フォロワー数が日本の約100倍という話。比べているのが英語圏中心だからかなと思ったのですが、「NHK WORLD」という英語で発信しているFacebookページでもフォロワー数80万そこそこ。「Facebookに頼らない」のは悪いこととは思いませんが、「Yahoo!ニュース」一強という状況は変えていくべきなのでは。
海賊版へ誘導サイト、強制捜査 著作権侵害疑い 日本経済新聞(2017年9月7日)
リーチサイト摘発難しく 被害深刻、政府は規制検討 日本経済新聞(2017年9月7日)
海賊版サイトへ誘導する「リーチサイト」が強制捜査、その後、複数のサイトが閉鎖されたそうです。容疑は著作権侵害「幇助」ということになるのでしょうか。まだ文化庁文化審議会法制・基本問題小委員会でもリーチサイト規制については議論されている最中で、インターネットユーザー協会からは反対意見も出ている状況。放置するとパッケージ販売産業が壊れてしまう可能性があるいっぽう、規制するとインターネット関連の産業が壊れてしまう可能性もある難しい問題です。なお、EU司法裁判所では、リンクを張ることが金銭的利益を得る目的で、かつ、リンク先が違法であることを認識していた場合は、公衆送信権の侵害になるという踏み込んだ判断がなされています。
マンガ“ネタバレサイト”の運営者ら、著作権法違反の疑いで逮捕 INTERNET Watch(2017年9月7日)
こちらはネタバレ「まとめサイト」の摘発。リーチサイト問題に比べたら、ストレートに公衆送信権と(電子)出版権の侵害なのでわかりやすい。それにしても「発売前に雑誌を入手しデジタルデータ化する」役割が、知ってか知らずか雑誌早売り店と関係してしまっているというのがなんとも。
電子書籍でAIと機械学習を活用したレコメンドサービスを提供開始 マイナビニュース(2017年9月7日)
NTTソルマーレ「コミックシーモア」の80万件のユーザーレビューを分析した、NTTスマートコネクトのAI・機械学習を活用したレコメンドサービス。アムタス「めちゃコミック」のAIを活用した業務効率化や、メディアドゥのAIで本の要約を紹介など、ブームとなった「人工知能」を活用したサービスの波が出版業界にも押し寄せています。
世の中の老眼諸氏よ、もっと怒れ PC Watch(2017年9月8日)
山田祥平氏がお怒りのようです。ヤフーと新潮社による「新しい読書体験」の提供を目指したプロジェクトのウェブサイトに掲載された小説が、文字が小さくて読みづらいのにブラウザの文字サイズ設定を変更しても変わらないようになっていたとのこと。OSやブラウザに標準で実装されているアクセシビリティ機能を無効にするなら、サイト独自で文字サイズ変更機能を用意するべきなのだろうな、と思います。もっとも、作家側に「改行位置に対する強いこだわり」があり、それを再現するための強制固定サイズなのかもしれませんが。京極夏彦氏が原稿を「InDesign」でレイアウトして入稿している、という話のように。
Amazon、KDPをだました出版社との仲裁を申請 TechCrunch Japan(2017年9月8日)
原題は “Amazon files for arbitration against Kindle Direct authors and publishers” です。出版「社」だと誤解が生じるので(KDPは法人じゃなくても利用できる)、出版「者」と訳したほうがよさそう。読了ページ数の水増し、偽カスタマーレビューなど、悪いことをする輩とのイタチごっこ。
「読書感想文を電子書籍で書くのはNG」ってどうして? 主催団体に聞いてみた ねとらぼ(2017年9月9日)
電子版は簡単にアップデートできる上、更新履歴がちゃんと残っていないから、というのが理由とのこと。『ビブリア古書堂の事件手帖』に版の違いで結末が異なるというネタがありましたが、読書感想文に「第何版何刷」というのを書いた記憶は、少なくとも私にはありません。全国コンクールレベルだと尋ねられるのかな? むしろ「子供たちに、物理メディアによる読書を、いまのうちに体験しておいて欲しいから」みたいな直球の理由のほうが、受け入れやすいかもしれません
タイトルで検索すると違法サイトがトップに…… 漫画家が1カ月間「違法アップロードサイト対策」をしてみた結果 ねとらぼ(2017年9月10日)
GoogleへのDMCA侵害申告を漫画家本人が試してみた結果、検索結果からは一網打尽にされたとのこと。これ、漫画家のやるべき仕事ではなく、出版社の仕事のような。
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