毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「カクヨム正式開始日にKADOKAWA糾弾小説」「4年後めどにデジタル教科書導入?」などが話題になっていました。
※タイトルなど初出時「カクヨミ」になっていました。正しくは「カクヨム」です。お詫びして訂正します。
BookLive、少女・女性向けマンガを無料で読める「マンガきゅんと」リリース -INTERNET Watch ※2016年2月29日
「少女・女性向け」と、ターゲットを明確にした無料マンガアプリ。BookLive!、攻め続けますね。
有名作家が「死後の世界」から書く文章:グーグルのAIが再現 « WIRED.jp ※2016年2月29日
プロジェクト・グーテンベルクの膨大な著作権切れテキストを活用したプロジェクト。日本では星新一や小松左京の作品を活用した「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」が動いてます。3月21日に星新一賞への応募報告会を行うそうですヨ。現役作家が、過去の名作のみならず、AIが生み出す「著作物」とも競争しなければならない世の中がすぐそこまで。
出版状況クロニクル94(2016年2月1日~2月29日) – 出版・読書メモランダム ※2016年3月1日
毎月楽しみな小田光雄さんの出版状況クロニクル、なのですが、8. 永江朗さんの「国民ひとりあたりの書籍の購買数というのはほとんど変わっていなくて」に対し、公共図書館の貸出冊数とブックオフの販売冊数というのは、反論として筋が悪いのでは。
楽天、書店と販売連携 ネットと実店舗のデータ相互活用 :日本経済新聞 ※2016年3月1日
大阪屋系書店に対する「楽天スーパーポイント」の導入は以前から進んでいましたが(記事)、今回のこれはPOS端末の提供。カナダKoboやドイツTolinoみたいに、もっと連携を強化して「電子書籍」を書店で売る方向へいくのか? そういえばBooCaはどうなった?
「KADOKAWAと契約したのに本が出ない」 KADOKAWAの「カクヨム」開設初日に核爆弾級の小説が投稿される – ねとらぼ ※2016年3月1日
当時の担当編集者が失念しちゃったのか、飛んじゃったのか。2015年1月1日に施行された改正著作権法から、電子出版にも「出版権」が設定できるようになっています。本件の場合、カクヨムの記事冒頭に「電子出版契約を結んだ」「独占的に許諾するってェ契約のやつ」「2015/01/01に契約を交わし」とあるので、著作権法81条「六月以内に当該著作物について公衆送信行為を行う義務」に該当するものと思われます。要するに、出版義務違反。「もうええわ!他所で出す!」と、出版権契約を消滅させることも可能です。結局丸く収まったようですが。
北海道のシャッター通りに本屋をつくる « マガジン航[kɔː] ※2016年3月2日
①「人件費をかけない」
②「家賃負担をしない」
③「利益率が高い」
営業時間は18時~22時。要するに、筆者の言う「道楽」に近いミニマムな形で「書店」を実現した、という話です。Amazonやヨドバシなどの通販は日本全国どこでも送料無料ですから、リアル書店が対抗するのはなかなか難しいですよね。
芳林堂書店、倒産の教訓 もたれ合いが共倒れを生む :日本経済新聞 ※2016年3月2日
「太洋社の自主廃業が、芳林堂書店の倒産要因」ではなく、「芳林堂書店が売掛金を延滞していたことが、太洋社の自主廃業に繋がった」ことをきっちり書いている記事。筆者は帝国データバンクの方なのですね。しかし、太洋社の帳合書店がトーハン・日販に狙いうちされ、草刈場になっていたことまでは書けなかったか。
株式会社日本電子図書館サービス、電子図書館サービス「LibrariE」における図書館向け電子書籍コンテンツが1万冊を突破したことを発表 | カレントアウェアネス・ポータル ※2016年3月2日
やっと1万点。2016年度中に3万点を目指すそうで、電子書店の5年遅れくらいな感じでしょうか。
【新文化】 – 有隣堂ヨドバシAKIBA店、リニューアルでカフェ併設へ ※2016年3月3日
いつもならピックアップするような記事ではないのですが、ここが本屋で買える電子書籍カード「BooCa」の対象店舗というのが気になります。リニューアルでどうなっちゃうんだろう? いま、対象店舗は全国でたったの3店舗。JPOから調査報告書(PDF)が公開されたのがちょうど1年前。フューチャー・ブックストア・フォーラムは、ドイツ視察以降の活動が不明。楽天も、せっかく事業継承したんですから、うまく活用して欲しいところ。
札幌市中央図書館、郷土資料をデジタル化してオンラインで公開するため、著作者や著作権者の連絡先等の調査をホームページ上で開始 | カレントアウェアネス・ポータル ※2016年3月3日
いわゆる「孤児著作物」問題。郷土資料のデジタルアーカイブを公開しようと思っても、保護期間内の場合は原則として著作権者の許諾が必要なので、連絡先を知ってる人は情報を提供してください、という呼びかけです。なお、文化庁長官裁定を受けるには、CRICのウェブサイトに広告を載せるなど「相当の努力」が必要となります。
全米視覚障害者連合とAmazonが視覚障害のある生徒の読書環境改善のため連携 | カレントアウェアネス・ポータル ※2016年3月3日
コンテンツ、プラットフォーム、アプリの改善がなされるとのこと。日本にも反映されるのかしらん?
ヨドバシ、他社の電子書籍も閲覧可能に まずPHP研究所 :日本経済新聞 ※2016年3月3日
「PHP研究所アプリ」を利用しているユーザーは、本棚連携してヨドバシ「Doly」でも読むことができるようになる、というニュース。BOOK☆WALKERはずっと前から、ニコニコ静画、電撃文庫CLUB、BookLive!、ブックパスと本棚連携していますが、他社ではこれまで同様の「生きた」動きはありませんでした(動きの止まっているプロジェクトはありますが)。ようやく、という感じ。これを機会に、他社ももっと連携を広げて欲しいものです。
“デジタル教科書”の課題とこれから~デジタル教科書教材協議会のシンポジウムより -INTERNET Watch ※2016年3月3日
冒頭にある「まず、デジタル教科書の位置付けに関する検討会議にどういう検討が必要か検討し」ってなんぞ? と思った記事。DiTT(デジタル教科書教材協議会)のお知らせをみるに、どうも「教育情報化推進法案」の発表がメインのシンポジウムだったようですが。
4年後めどにデジタル教科書 導入へ NHKニュース ※2016年3月4日
NHKは記事をすぐ消しちゃうので魚拓も。教育新聞によると、文科省担当者は「まだ決まっていない」と言ってるそうです。ところで教科書販売って、地域の書店にとっては結構大きい収益源なはずなんですが、どうなんちゃうんだろう? 一般社団法人全国教科書供給協会とか全国教科用図書卸協同組合とか一般社団法人教科書協会など、いろんな団体があるんですね。うーん、世の中、知らないことだらけだ。
『キングダム』がまた売れている!?「アメトーーク!」最新DVD発売記念スペシャル放送で売上は5倍以上に | ほんのひきだし ※2016年3月4日
やっぱりテレビの影響力はすごい、と思い知らされる案件。放送で触れられたのは、たったの3分だったそうです。
三田市立図書館、電子図書館サービスに視覚障がい者対応機能を追加 | カレントアウェアネス・ポータル ※2016年3月4日
3月2日に行われたシンポジウム「電子書籍の出版・流通と図書館の課題——読書アクセシビリティを中心に」で報告を聞いてきました。2015年1月から3月にかけて、三田市立図書館で、図書館流通センターの電子図書館サービス「TRC-DL」のアクセシビリティを検証する実証実験が行われたそうです。DNPの方いわく、視覚障害の方が1人で読むことができないので「まったく使いものにならない」ことがよくわかったとのこと。課題を整理して要件定義し、開発し直しているそうです。2017年度から導入予定と言っていたので、ズバリこれのことだと思われます。昨年の図書館総合展に参考出典されていたものは、メニューの音声ガイドや音声入力にも対応していました。
著作権者不明作品をデータベースに 文化庁、利用しやすく :日本経済新聞 ※2016年3月5日
いわゆる「孤児著作物」問題への対策。保護期間を70年に延ばすなら、もっとさまざまな対策を同時に行わねば。
「Weekly 見て歩く者 by 鷹野凌」というGoogleグループを作りました。登録すると、毎週この「出版業界関連の気になるニュースまとめ」がメールで届くようになります。ときどき号外を配信するかも? ブログの更新チェックが面倒な方はぜひ登録してください。無料です。