毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「電子書籍移行で失われる読書体験」「KDDIがナタリー買収」などが話題になっていました。
米Amazonの電子書籍部門の最高責任者「出版の世界で必要なのは書き手・読み手の2者だけ」 ※2014年8月18日
この記事の「その中間にいる出版社やエージェントは常にリスクを素直に受け入れなければならない」を読んで「相変わらずAmazon的発想だな……」と思ったのですが、英The Guardian紙の記事を参照すると “Everyone who stands between those two has both risk and opportunity.” (太字強調は私)とあり、Amazon自身も含まれる話になっていることが分かります。しかも「リスクを素直に」ではなく「リスクとチャンスの両方」だし。こういう妙な意訳、勘弁して下さい。
Koboの新端末とみられる「Kobo aura H2O」 H2Oはやっぱり防水? – ITmedia eBook USER ※2014年8月19日
日本未発売の6.8インチ電子ペーパー端末「kobo Aura HD」の後継みたいです。お風呂読書は結構需要があるので、問題は「ジップロックで充分」と思われてしまう可能性でしょうか。あまり高価くならなきゃいいんですけど。
青春コメディマンガ『ReLIFE』 発売からわずか1週間で追加重版決定 – ITmedia eBook USER ※2014年8月19日
「comico」連載マンガの単行本、売れてるようです。無料アプリで認知獲得、単行本でリクープというビジネスモデルがちゃんと回り始めたかな?
【新文化】 – 日販が平安堂、高沢産業などを提訴 ※2014年8月20日
一方的解約&トーハンへの帳合変更が “商道徳のうえでも「到底受け入れられるものではない」” という理由での提訴。「商道徳」を持ち出すところがおや? という感じ。契約書の解約条項、どうなってるんでしょうね?
青山学院大学経済学部で進む電子教科書導入、その意図と課題――宮原経済学部長に聞く – ITmedia eBook USER ※2014年8月20日
京セラ丸善システムインテグレーション(KMSI)の「BookLooper」を導入。読者の閲覧行動を把握する機能が決め手だったとのこと。翻訳本の電子化に伴う再許諾交渉とコストなどの苦労話も。
電子書籍に移行することで失われる読書体験の中身が少し判明 – GIGAZINE ※2014年8月21日
単純に「慣れ」の問題だと思うんですけどね。ちなみに、ソクラテスが著作を残さなかった理由をWikipediaから引用しておきましょう。
ソクラテスは、話し言葉、つまり「生きている言葉」は、書き留められた言葉の「死んだ会話」とは違って、意味、音、旋律、強勢、抑揚およびリズムに満ちた、吟味と対話によって1枚ずつ皮をはぐように明らかにしていくことのできる動的実体であると考えた。書き留められた言葉は反論を許さず、柔軟性に欠けた沈黙であったので、ソクラテスが教育の核心と考えていた対話のプロセスにはそぐわなかったのである。
口述伝承から書物への移行によって、失われたものもあれば、得られたものもありますよね。「電子書籍」も同じことだと思います。
Amazon、電子書籍紛争の弁明でジョージ・オーウェルを引用するも──読み違えとの指摘 – ITmedia ニュース ※2014年8月21日
オーウェルの発言は皮肉だから、そのまま引用しちゃおかしいぞというツッコミが New York Times から入ったそうです。はてなブックマークに「Kindleは、オーウェルに祟られてる」というコメントがあって、なるほどと感心してしまった。
マンガを翻訳して全世界へ、マンガ翻訳プラットフォーム「Subch」が公開 – ITmedia eBook USER ※2014年8月21日
対象作品がまだ3つというのがちょっと寂しい。同じような翻訳プラットフォームには「マンガリボーン」や、クラウドソーシングで翻訳するエニグモの「BUYMA Books」などがあります。どう差別化していくか。
個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十二回 | ITライフハック ※2014年8月21日
ちょっとアレ? と思った記事。林拓也さんらしくない。
ここ1~2年で電子書店の淘汰が進んでいますが、サービスを終了した電子書店のほとんどは購入した(つもりの)電子書籍が閲覧できなくなっているのではないでしょうか。
「ヤマダイーブック」の閉鎖と新サービス移行騒動の時にひと通り調べたのですが、サービス終了と同時に閲覧不能になったのはローソン・エルパカBOOKSだけで、他のストアは「ダウンロード済みコンテンツは、端末が壊れるまで読み続けられる」のです。
一般消費者からすると「端末壊れたら読めなくなるのだから、どっちみち不安だ」というのは確かなのですが、「サービス終了と同時に電子書籍が閲覧できなくなっている」わけではないのにそう断言しちゃうと、余計に誤解やら不安やら広げちゃうのでは。
しかし、不安がつのるほど「独自形式&DRMでユーザーを囲い込み、毎年赤字を出してる会社(=Amazon)」へ支持が集まるんだから、変な話ですよね。
KDDI、「ナタリー」買収 運営会社を子会社化 – ITmedia ニュース ※2014年8月22日
「ナタリー」運営会社のナターシャがバイアウト。メディア系の方々を中心に、大きな話題になっていました。共同創業者の津田大介さんが、ナタリー立ち上げを振り返って3年ぶりにブログを更新しています。真っ当なメディアをどうやって立ち上げたか、貴重な記録。必見。
しかし、KDDIはGunosyとも資本提携してますし、ニュース・メディア系への活発な投資が目立ちますね。そのうち新聞社買ったりして。
電子出版と電子書籍の今とこれから ※2014年8月23日
技術評論社の馮富久さんによるスライド。ここ5年間くらいの業界動向振り返りと、技術評論社の電子書籍制作フローなどがまとまっています。「2012年の楽天Kobo」は、業界関係者には結構評価高いんですよね。
電子出版、作家も本格参入 成長するビジネスモデル 既刊作品が続々、絶版復刊も魅力 :日本経済新聞 ※2014年8月23日
ボイジャー×池澤夏樹氏や、クリーク・アンド・リバーの話。「もともとアンチ電子書籍だった」椎名誠氏が「たくさんの本を書いてきて、絶版になる作品も多い。今回電子化に踏み切ったのは、それらを新しい読者に見てもらいたいと思ったから」と考えを改めたというのが興味深い。