毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「講談社が一迅社を子会社化」「ボブ・ディランがノーベル文学賞」などが話題になっていました。
米Amazonの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」の報酬集計にバグ? 今年6月に導入した「Page Flip」機能が原因か – hon.jp DayWatch ※2016年10月11日
お金に関わる部分だけに、痛いバグ。著者側としては報告されている数字を信頼する以外ないわけですが、こういうことが起こるとその信頼が崩れてしまうわけで。むかしは出版社が著者に無断で増刷する行為を防ぐ「検印」があったという話を思い出しました。
米国の作家団体The Authors Guild、個人作家も特別会員として入会許可スタート、出版の有無も問わず – hon.jp DayWatch ※2016年10月12日
「会員たちの高齢化と年会費収入の減少にも頭を悩ませている」とのこと。出版の有無さえ問わないそうです。日本文藝家協会にも同じような問題が起きていると聞きますが、“入会には「文芸的」著作物である単行本を、一冊以上出版していること” という条件が緩和される日はくるのでしょうか? ちなみに日本独立作家同盟は、最初から「来る者は拒まず」で審査や許諾などのハードルは特に設けていません。
Author Earnings最新レポート「個人作家の電子書籍シェアが初めての減少を見せる」「代わりに中小出版社が健闘」 – hon.jp DayWatch ※2016年10月13日
Author Earnings のレポートではずっと成長してきた個人作家のシェアが、減少傾向にあるそうです。The Digital Readerの推測では「Kindle Unlimited」参加作品を優先表示させるUI変更に中小出版社のほうが積極対応できている、とのこと。Amazon.com を見てみたのですが、何が変わったのかわかりませんでした。
B・ディラン氏がノーベル文学賞 「近代の分裂」癒合|エンタメ!|NIKKEI STYLE ※2016年10月13日
ボブ・ディランがノーベル文学賞。米文学者の佐藤良明氏による解説。「文学の文脈が変わったのであって、その変化を生み出す中心にディランがいた」とのこと。「大学の文学部は、詩や小説に加え、映画、ポピュラー音楽、ファッション等を対象とした文化研究の場に移行しつつある」という変化が起きているのですね。なるほど。
KADOKAWA、新潮社、スマートニュースが明かす「次世代電子書籍ビジネス」とは何か |ビジネス+IT ※2016年10月13日
東京国際ブックフェアの講演レポート。ボイジャーのブースに貼りついていて聞けなかったので、非常にありがたい。インプレス、KADOKAWA、新潮社、スマートニュースの現状と今後について。「Impress QuickBooks」700タイトルの読み放題売上比率が、「Kindle Unlimited」開始前の時点で50%に迫る状況になりつつあるというのは、読み放題とイーシングル(短い電子書籍)の相性の良さを裏付けているように思います。
本当に必要?本の消毒器を設置する図書館が増え続ける理由 : 出版・書店業界がわかるWebマガジン KOTB[コトビー(ことびー)] ※2016年10月13日
このTRCの「ブックシャワー」は1台約67万〜85万円するそうです。「本に髪の毛が挟まっていた」「たばこの臭いが染みついている」といった苦情へ対応するために導入しているそうです。だったら図書館で借りずに新刊を買えばいいのに。ちなみに最近この「ブックシャワー」と、同じくTRCの「雑誌スポンサー」と、内田洋行の「読書通帳機」について、ある政党の地方議員が一様に「図書館へ導入しないのか?」と議会で質問しているそうです。Googleで検索してみて、なるほどなあと思いました(良い悪いではなく)。
講談社が一迅社を完全子会社化 – コミックナタリー ※2016年10月14日
講談社と一迅社の共同会見、「いい補完関係に入れる」 – コミックナタリー ※2016年10月14日
「エニックスお家騒動」から生まれた一迅社(旧スタジオDNA・一賽舎)が講談社の傘下へ。一迅社側からの申し出だったようです。「一迅社がこれまで資本面や人材面のリソース不足から展開しきれずにいた電子書籍事業と海外事業」とありますが、コミックの電子化は4513冊中1701冊(37.70%)と平均的な数字。問題は、制作体制でしょうか。この件、別記事でもう少し深掘りします。
講談社社長 読み放題配信停止でアマゾンと協議へ | NHKニュース ※2016年10月14日
野間社長がコメント。小売店には扱う商品の選択権があるわけですし、実際のところ Amazon が協議に応じるとも思えないので、この問題はこのまま尻すぼみでなんとなく終了する気がします。講談社自身が、自社作品の読み放題プラットフォームを用意すればいいんじゃないかな?
「史上最大の崖っぷちに追い込まれております」―― コミックビームが突然の「緊急事態宣言」 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか (1/3) – ねとらぼ ※2016年10月14日
コミックビームの編集総長・奥村勝彦氏が大いに語っています。かなり辛辣な反響が多いのですが、個性的な作品が多い雑誌なので「ターゲット以外に届いてしまった」ということなのかな、と。それにしても、「自分が死なない限り、戦争はたぶん最高のエンターテイメント」という指摘には、はっとさせられました。「エンタメが萎縮すると戦争に向かう」という仮説、興味深い。
地味というより本当にスゴイ!校閲さんの実際のお仕事│NEWSポストセブン ※2016年10月16日
石原さとみ主演のドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール」が好評のようです。日本独立作家同盟で出している『セルフパブリッシングのための校正術』も、ドラマ開始以降、販売部数が伸びています。
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