ああもう、背景が写真や映画そのもののような漫画は死ぬ程うんざりだ。
— 江口寿史さん (@Eguchinn) 11月 29, 2011
漫画家・イラストレーターの江口寿史さんがこのツイートをして以降、作品の名前を具体的に挙げて自分の思いを述べたことについて、周辺に波紋が広がっています。
江口寿史先生の「マンガの背景」論と、マンガ家たちの反応。
他にもまとめはいくつかありますが、このまとめがその後の流れも含め一番判りやすくて良いと思います。
誰が誰を批判した~というのは、当事者にとっては大変な話でしょうけど、ボクにとってはどうでもいい話です。ただ、この「背景が写真や映画そのもの」という状況については、いろいろ思うところがあるのでちょっと書き連ねてみます。
背景が印象的な作品って何だろうと自分に問いかけてみて、最初に思い浮かんだのが川原正敏さんの「修羅の門」です。
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川原 正敏
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この作品、とにかく背景が白い。最初は「手抜きすんな」と思ったんですが、読み進めるうちにそうじゃないんだということに気づきました。背景がちゃんと描かれている場面と、そうじゃない場面があるんですね。戦闘シーンや睨み合い対峙するシーンなど、キャラクターの動きや心理描写に重点が置かれている場面では背景が無くなる。つまり、場面効果を考えた結果、演出としての「白い背景」だと思うんです。
ボクが大好きな芦奈野ひとしさんの「ヨコハマ買い出し紀行」や「カブのイサキ」は、背景というより情景という言葉が相応しい。作品世界の空気の匂いまで伝わってきそうな気がする。書き込みは他に比べるとむしろ少ない方だと思うんだけど、非常に効果的かつ印象的な絵です。
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芦奈野 ひとし
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ポイントは、作品世界やキャラクターと、背景とのバランスだと思うんです。もちろん人によって好き嫌いはあるだろうし、逆に言えば全ての人に受け入れてもらう必要も無いんじゃないかな、と。筆者が「この作品にはこういう背景が良い」と思うなら、写真を加工して貼りつけただけのモノでもいいと思うんですよ。それが「読者(ファンと言った方がいいかな?)」に受け入れられるかどうか、ですよね。ボクはあまり好きじゃないですけど。
ちょっと話は変わりますけど、アニメの背景が、最近はやけに緻密に描かれるようになったなーと思います。実際の風景を取り入れているので、「聖地巡礼」なんていうのも流行るようになりました。街おこしにアニメを利用するような所も増えてきました。典型的なのは「らき☆すた」だと思いますが、それ以前ってどうだったんでしょうね?
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何で読んだかは忘れてしまったのですが、「最近アニメに学園モノが多い理由」について読んだ記憶があります。いや、むしろ文脈としては「最近はSFやファンタジーが好まれない理由」だったかな?実在しない世界の背景は描きづらい(=受け手も想像しづらい)から、描きやすい(=誰もが想起しやすい)「現代」の「学校」が舞台に選ばれるケースが増えてきた、とか。
「描きづらい」という生産者側だけの理屈なら納得できないんですが、受け手側にも要因があるとなると……実在しない世界での出来事には親近感を覚えることができない、という消費者が以前より増えてきている「らしい」んですよね。
現在の消費者の多くが「実在しない世界での出来事には親近感を覚えることができない」のであれば、もしかしたら「写真や映画そのもののような背景」はニーズに応えた結果なのかもしれませんね。
ボクはあまり好きじゃないですけど。