文化庁主催 第8回コンテンツ流通促進シンポジウム『著作物の公開利用ルールの未来』に行ってきた

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モデレーターは著作権専門弁護士でおなじみの福井健策さん、パネリストにクリエイティブ・コモンズ・ジャパン常務理事の野口祐子さん、森美術館館長の南條史生さん、津田大介さん、赤松健さん、文化庁著作権課著作物流通推進室長の山中弘美さんというシンポジウムを聴講してきましたのでレポートさせて頂きます。

現地に着いて「えっ」と思ったことが2つ。

え、生放送やるなんて、事前に案内なかったんですけど。そして構内に入ると「場内の写真撮影や録音は禁止させて頂きます」という場内アナウンスが。ええっ?だったらわざわざ会場まで来た意味ないじゃん

慌ててスタッフの方にかけあってみたのですが、メディアからの取材依頼も全て断ったくらいなので、許可はできないとのこと。そんなあ。というか、そういう重要なポイントは事前に案内しておいて下さいよ。

まあ、「ダメですという”意思表示”」をされてしまったからには仕方がありません。写真なし、会場でとったメモだけで簡単にレポートさせて頂きます。はっきり言って、ものすごーくレポートを書くモチベーションを削がれているので、文体が荒っぽいかも。読み進める場合は予めご了承下さい(;^ω^)

詳細が知りたい方は、ニコ生でタイムシフトを見るか、後日文部科学省のYouTubeチャンネルにアップされるそうなので、そちらを御覧下さい。3時間くらいです。

第1部はまず、野村総研の小林さんによる「意思表示システムの在り方に関する調査研究」の報告から始まりました。

文化庁では2003年に「自由利用マーク」という仕組みを策定して、現在まで運用しています。これは「自由」と言いながら、利用範囲が非常に限定的なため、はっきり言って全く認知も利用もされていません。

また、2007年からは「CLIPシステム」という日本独自の意思表示システムを構築しようと、研究会を開いたり実際のシステム開発まで取り掛かっていたそうです。しかし改めて考えてみると、有効性(日本独自のシステムだと海外の方が理解できない)・効率性(新たなシステムの認知活動が必要だったり、システム運用にお金がかかる)・必要性(国がわざわざやらなくても、いいものが他にあるじゃん)という観点から、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」でいいじゃん、という結論に至ったそうです。文化庁がCC正式採用です。

要するに「お国の予算を使って独自のものを作りかけていたけど、それは捨てて『クリエイティブ・コモンズ・ライセンス』を推奨することにします」という話。「CLIPシステム」がこういう構想だったのだとか、理念は素晴らしかったとか、いろいろうだうだと説明がありましたが、文化庁として一旦進めていた事業を中止するにあたって、ちゃんと言い訳をしなきゃいけないのだなーと。まあ、なかなか辞められずにズルズルと突き進んで、結局使えないものを生み出してしまうより遥かにマシなわけで、その点に関しては素直に評価したいなーと思います。

続いて、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン常務理事の野口祐子さんから、そもそもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスとはなんぞや?現状どうなってるの?どんな事例があるの?という説明がなされました。

野村総研小林さんの話でちょっと聞き捨てならなかったのが、「CLIPシステム」との比較で「クリエイティブ・コモンズは個別の条件を付けることができない」という説明がなされた点。

実際のところクリエイティブ・コモンズ・ライセンスには「適用除外」というのがあり、「この作品について著作権者等の権利者から別途許可を得た場合は、上記の許諾条件は適用されません」と明記されています。

野口さんも事例を紹介する中で「TEDのCCライセンスは[改変禁止]ですが、翻訳については別途許諾を与える独自の運用をしている」と言ってましたので、別にそういう使い方はダメだというわけではないようです。つまり野村総研、何言ってんだ?ということで、ツッコミを入れておきます。


第2部は冒頭に挙げた方々によるパネルディスカッションです。モデレータの福井さんからは、以下の3点+αが議題として提示されました。

  • 1.意思表示をして流通促進することと収益モデルをどう両立させればいいのか?
  • 2.意思表示されていない孤児作品問題をどうしていけばいいのか?
  • 3.「二次創作文化」をどう守ればいいのか?
  • +α:何か提案があれば

提示されたのですが、森美術館の南條さんは「森美術館がCCを利用した事例」を紹介しただけでした。うーむ。

津田さんは「著書にCC付けて3冊合計10万部くらい売れました」といった自身の事例紹介と、「青空文庫」に対する「CC文庫」を作ってみてはとか、TSUTAYA(CCC)と提携してみては、といった提案がなされました。次の赤松さんの印象が強くて、わりとスルーされてた感じです。あ、でも、紹介されてた事例で「TweetCC」というのは興味を惹かれました。ツイートってTwitterが利用する権利許諾を得ているだけで、別につぶやいた人から著作権がなくなるわけじゃないんですよね。でも、CCで予め意思表示すしておく仕組みがあったとは。

そして赤松さん。「CCを普及させたいなら、とにかくマンガにとって使い勝手がよくないと!」という意見はかねてから一貫しています。現状のCCはデットコピーOKが前提だから、マンガには使えない。デットコピーはダメだけど、二次創作ならいいよ、というライセンスをCCに用意して欲しい、という提案ですね。

「TPPの知的財産権と協議の透明性を考えるフォーラム(thinkTPPIP)」公開シンポでの「Pマーク」提案は、コミケの実行委員会などからいろいろツッコミが入ったそうで、今回はまた新しいマークを用意していました。その名も「CVマーク」。同人イベント当日頒布だけは”connivance(=黙認)”します、という意思表示マークです。ワンフェスの当日版権と同じような仕組みですね。

赤松さん本人が「ポイントは公式に認めるわけじゃない」と言いながら、「”黙認”することを意思表示って意味がわからない」みたいな感じではあったのですが……まあボクは、1つの提案としてたたき台にすればいいのではないかな?と思います。ちなみに赤松先生が使った資料は、後日ネットで公開するそうです。「写真禁止でしたもんね」と。さすが。

[追記] 公開されました。

クリエイティブ・コモンズの野口さんは「検討します」と言ってましたが、基本的に世界標準規格なので実現できたとしてもかなり時間がかかりそうな感じでした。クリエイティブ・コモンズはどんな著作物にも対応できる標準的なライセンスだから、音楽・マンガ・文章・ゲームなどなど、エコシステムによって異なる事情を取り入れると複雑になりすぎてしまい、普及が阻害されてしまうと。例えばソフトウェアのGPLみたいに、それぞれのエコシステムに合致した専用ライセンスがあってもいいのではないか、ということをおっしゃっていました。

会場からの質問で興味深かったのは、「企業はCCの[非営利]を使うことができるのか?」というもの。法律が国によって違うため、クリエイティブ・コモンズとして[営利/非営利]のライセンスについて明確な定義は行なっていないそうです。実際問題、企業が営利活動を行う組織なので、日本の法律的には[非営利]が表示されてたら、企業はどんな目的だろうと使わないほうが無難だろう、とのこと。なるほど。逆に、権利者側が[非営利]を定義してあげて欲しいということも言ってました。ボクは営利の定義を明記しているので、すごーく正しい運用の仕方をしていたということになります。むふふ。

で、ここからは余談。

電子マンガサミットで赤松さんが、Jコミ関連で新しい仕掛けを用意しているという話がありました。今年の年末くらいにいろいろわかるよ、と。これって、CCとは別に独自のライセンスを用意しました、という話になるのではないかなー?と。あくまで推測ですが。赤松さんはCCに「デットコピーはNO、二次創作OKというライセンスを用意してください」と何度も何度も言ってきてます。ただ、実現する見込みは薄いとも思っているのではないかな?と。うまいこと採用されれば万々歳ですが、そうじゃないならJコミ独自で走っちゃえ、みたいな。実際、クリプトン・フューチャー・メディアのピアプロ・キャラクター・ライセンスは、CCとは別に運用されているわけですから(※CCライセンスでも可になったのは最近の話)。

[追記] ハズレでした!

いずれにしても、TPPによってフェアユースがないまま「非親告罪化」されてしまったら、コミケに代表される二次創作文化が萎縮するのは間違いない話で、それを防ぐためにいろいろみんな考えて動いてるのだな、というのが感じられたシンポでした。

[追記]

ここもツッコんでおかねば。

野口さんが第1部で「意思表示をすることによる成功事例」説明する時に、クリプトン・フューチャー・メディアの初音ミクについて触れたんですね。そこで「初音ミクを自由に使っていい形にした」という言い方をしてしまった。もしかしたらボクが「事前に許諾された範囲であれば」的な説明を聴き逃してしまったのかもしれないのですが、ここって誤解をされやすい、でも絶対誤解されてはいけないポイントなのですよね。「なんでも自由に使っていいものなのだ」というような勘違いをされたら、ライセンスを表示している意味がないわけですから。会場で思わずツイートするくらい、「およ?」と思った点でした。あとでニコ生確認してみよう……。

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