「週刊アスキー印刷版休刊」「『境界のないセカイ』マンガボックスからKADOKAWAへ移籍」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #162(2015年3月30日~4月5日)

Nexus 7のKinoppy

毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「週刊アスキー印刷版休刊」「『境界のないセカイ』マンガボックスからKADOKAWAへ移籍」「エイプリルフール」などが話題になっていました。

英作家団体が批難、放送禁止用語などを置換表示する電子書籍ビューワアプリ「Clean Reader」 ※2015年3月30日

「同ストアで販売されていた作品の作家たちはその機能の事を事前に知らされておらず」という点が問題。無断で置換表示したら同一性保持権侵害の可能性が高いです。某所で「アプリの開発者に比べて、そんなに作家が偉いのか!」という擁護意見を見かけましたが、法律上、原著作者が偉い(アプリの開発者は、元の作品を二次利用している立場)ことになっています。

試しにアプリをインストールしてみたのですが、既に「ストア」からは本が消えていました。まあ、そんなところで売りたくないですよね。「嫌な店には売らせない」ことができるという意味でも、作家の方が圧倒的に立場が上です。

ちなみに縦書きのEPUB 3ファイルを開いたらめくり方向が逆になってて、ビューワとしてもダメだこりゃという感じでした。

「週刊アスキー」印刷版が休刊、完全デジタル化へ!電脳なをさんは連載終了 – IRORIO(イロリオ) ※2015年3月31日

「週アスPLUS」の告知記事が3月31日だったので、「1日早いエイプリルフールか!?」などと衝撃が走っていました。

「電脳なをさん」連載終了まで網羅している記事が意外に少ないため、IRORIOをピックアップ。「Newsstand」「Kindleストア」「BOOK☆WALKER」「dマガジン」などで配信されている「週刊アスキー」電子版には、実は「電脳なをさん」が含まれていません。ウェブ配信も、「週アスPLUS」には載っておらず、「cakes」だけでした。単行本も、一部しか電子化されていないという状態。

どういう判断でそうなっているか理由は分かりませんが、恐らく週刊アスキーを電子化する際に規制が一番厳しいAppleからリジェクトされてしまった、という辺りが予想できます。「cakes」で連載続けられないのかな?

岩波書店の歴史的名著41作品をKindle本化、一律300円で販売開始 -INTERNET Watch ※2015年3月31日

国立国会図書館(NDL)のパブリックドメイン古書コンテンツを販売する「NDL所蔵古書POD」の発展版。岩波書店との協業です。この辺り重要な情報なのに、記事中では触れられていない……。今までPOD(プリントオンデマンド)だけだったのが、電子版での配信も始まった、というニュース。元がスキャン画像なので、固定レイアウトです。ちなみに同様のモデルの「Kindleアーカイブ」には岩波書店の本が含まれておらず、住み分けはできているようです。

ついにエロマンガ壊滅へ!? トーハンの取引条件変更で、エロ系出版社が続々と破綻秒読みか…|おたぽる ※2015年3月31日

昼間たかし氏の記事。「トーハンの条件を承諾しないなら、雑誌コードは卸さない【註:その出版社の雑誌を書店に配本しない】」と脅してくるというのは、あり得そうな話。書店流通が不能になると取次の金融機能(発行部数ベースで代金を支払う)が使えなくなり、自転車操業状態の出版社は資金繰りが苦しくなるわけです。しかし、その締め付けってガチョウを絞めて金の卵を得ようとする真似なのでは。実際のところ、エロ系のネット通販や電子配信など、取次・書店流通以外の割合ってどれくらいなんでしょうね?

エイプリールフール2015:2015年エイプリルフールネタまとめ – ITmedia eBook USER ※2015年4月1日

出版社や電子書店系に絞ったエイプリルフールネタまとめ。「ニセコイモノガタリ」のPVなど、4月1日限定公開だったネタも多いです。

足掛け3年の集大成「もう間違われてもいい」昭文社×旺文社コラボ – ITmedia eBook USER ※2015年4月1日

エイプリルフールネタではあるのですが、普段から間違われることが多いのでネタとして笑い飛ばすしかない、という感じ。この開き直り方が素晴らしい。

<TPP交渉をきっかけに議論に> 著作権侵害が「非親告罪化」したらどうなる? 弁護士・中川隆太郎 | THE PAGE(ザ・ページ) ※2015年4月1日

「じゃあ、どうすればいいのか?」という提案部分を引用しておきます。

もし非親告罪化を危惧するならば、きちんと声を上げる必要があります。「密室で決められた非親告罪化もやむなし」なのか、「自分たちの手で、日本に最も適したルールを作りたい」のか。「残り時間」の短い中、判断するのは、皆さん一人一人です。

まずは「密室協議をやめてくれ!」と声を挙げるところからですね。「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム(ThinkTPPIP)」では、「TPP知財条項への緊急声明案」に賛同する団体・個人を募集しています。

FlickrがパブリックドメインとCC0のライセンス設定に対応 – GIGAZINE ※2015年4月1日

従来、Flickrへのアップロード時に設定できるのは、一番緩いライセンスでもCC BYでした。そこへ今回、CC0とパブリックドメインも追加された、というニュース。クリエイティブコモンズがめっちゃ喜んでる記事をアップしてました。ちなみに『Attribution』と書いてあるライセンスに設定してアップロードすれば、二次利用する側には著作者の名前を表示する義務が発生します。

出版状況クロニクル83(2015年3月1日~3月31日) – 出版・読書メモランダム ※2015年4月1日

毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。

日本の出版業界は講談社と同様に、コミックによってかろうじて支えられているといって過言ではない。したがってコミックの電子書籍化が何をもたらすかは火を見るより明らかであろう

相変わらずのカニバリズム論(出版社による電子コミックは紙の流通を滅ぼす、という意見)ですが、今回は漫画家・里中満智子さんの言葉を引用して反論とさせていただきましょう。

漫画の海賊版は紙の漫画をスキャンしたものが多く、そういった意味ではデジタル化が進めば漫画の海賊版も減っていくのではないでしょうか

出版社が電子化しなければ取次・書店流通が守れるなんて幻想で、スキャンレーション(海賊版)が増えるだけだ、という認識がもっと広がるといいのですが。

【境界のないセカイ】別の出版社で連載継続へ 「LGBTへの配慮で発売中止」の漫画 ※2015年4月1日

「境界のないセカイ」KADOKAWAから単行本発売へ 少年エースで連載 ※2015年4月2日

マンガボックスでの連載が休止になってしまった「境界のないセカイ」が、KADOKAWA「少年エース」へ移籍して連載継続することになりました。めでたい。Rebisさんのように商業誌からインディーズという道もあるかなと思っていたのですが。

iOSアプリ値上げ 100円→120円に 1年半ぶり価格改定 – ITmedia ニュース ※2015年4月3日

Appleが突然(今回の場合24時間前に通告)こういうことをするのは通例ですが、対応する側はたまったものではありません。これ、アプリ内販売にも影響するので、「Kinoppy」や「BOOK☆WALKER」など、Apple IDに対応している良心的なアプリだけが、強制的に対応せざるを得ない状況に突然追い込まれてしまうという、なんとも気の毒な状況が発生しています。価格改定が間に合わないので、現時点ではアプリ内販売をストップしているようです。

82歳の官能小説評論家がふり返る『日本の官能小説』と性表現 ―摘発と戦ってきたエロスな文学の深淵 | ダ・ヴィンチニュース ※2015年4月3日

官能小説の性表現(文字)が「羞恥心を刺激する表現はいけない」と摘発対象にされてきた歴史の話。〈挿入〉と書くとアウトなので〈身体を重ねる〉という表現が工夫されたという話など、いろいろ興味深いです。

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